陰翳礼讃と椀の音
ふと久しぶりに手にした谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」。
その言葉づかいにあらためて心を動かされた。
二十歳になったばかりのころ、ボストンで日本について
聞かれると「タニザキ、タタミ、モノノアワレ!!」などと
軽々しく言っていたものの、谷崎の文章はそうたやすくは
つかめない。
こんな風なくだりがある。
「私は、吸い物椀を前にして、椀が微かに耳の奥へ沁むように
ジイと鳴っている、あの遠い虫の音のようなおとを聴きつゝこれから
食べる物の味わいに思いをひそめるとき、いつも自分が三昧境に
惹きいれられるのを覚える。」
派手さはないけれど、凄く感覚的な表現。
「三昧境」なんて、しびれる。
「美というものは常に生活の実際から発達するもので、
暗い部屋に住むことを余儀なくされたわれわれの祖先は、
いつしか陰翳のうちに美を発見し、やがては美の目的に
添うように陰翳を利用するに至った。」
うん、今日はこれでもう十分。




